チャイムが鳴ると同時に席を立つ。

荷物をまとめてさっさと教室から出て行いこうとするユカリちゃんを慌てて追いかけた。


「ユカリちゃん!」


廊下まで出て、やっと声を掛けることができた。

教室から出てきたクラスメイト達がジロジロと見ていく。

みんな、あの男の子とユカリちゃんに何があったのか、興味津々なのだろう。


「ちぃちゃん、ちょっとこっち来て」


この場では何も話せないと思ったのか、ユカリちゃんはわたしの手を引いて歩き出した。


廊下の突き当たりにある視聴覚室の前まで行くと立ち止まり、手を放してくれた。

そのあたりには誰もいなかった。


ユカリちゃんは黙ったまま、ずっと背を向けている。


わたしは彼女の前へまわった。

うつむき加減だったけど、背の低いわたしからは、逆に彼女の顔が良く見えた。


頬が痛々しく赤く腫れあがっている。


「ユカリちゃん……」


その頬に手をかざそうとしてやめた。

触れたら余計に痛そうな気がしたから。

ユカリちゃんの心の傷にまで触れてしまいそうだと思った。


ユカリちゃんは、何かを決心したように顔を上げた。