サトシとオレはサトシの兄貴に車を出してもらってスノーボードをしにやってきた。

深夜に到着し、車の中で仮眠を取っていると、空の色が少しずつ変わり始めた。

夜明けを待ちきれないオレ達は、「もうちょっと寝る」と言うサトシの兄貴を車に残してゲレンデに向かった。


気の早いスキーヤーのために、リフトはもう動き出していた。


「やりー! 一番乗りー!」

山頂に着いても人の気配はなく、まさにオレ達だけで独占って感じだった。

昨日から降り積もった雪のせいで、まだ誰も滑っていないゲレンデには1本の筋すらついていない。


「なぁ……。この雪見てたら、ちぃちゃん思い出さへん?」


ふいにサトシが妙なことを言い出したものだから、オレは思わず吹き出した。


「はぁ? なんやねん、それ?」


既にバインディング装着済みのサトシは、ゴーグルを額に上げると眩しそうに目を細めてゲレンデを見渡していた。


東の空がだんだんと明るくなり始め、少しずつその姿を現した太陽に斜面の雪が照らされてキラキラと輝いていた。


「なんつーの? 真っ白っていうか、けがれを知らんっちゅうか……」


「なんやねんそれ。お前が言うとなんか卑猥な意味に聞こえるねんけどー」


「ああ、そっちの意味でもやな。確かに……まだ真っさらやな、あの子は」


「はは……」


オレはサトシのエロトークに呆れてた。

つか、彼女に対してそういうエロなイメージってなんか湧かない。

オレの返事があいまいだったせいか、サトシはくいついてきた。


「って、お前……やったん? ちぃちゃんと」