「ところで、サトシ君は何してたん?」


「オレ? 今夜から滑りにいくねん。ゴーグル、新しいの買いにきてん」


そう言って、スポーツ用品店のものらしい紙袋を見せてくれた。


そっかぁ……。

サトシ君、ボードやるって言ってたもんなぁ。


「どこまで行くん?」


「んー。まだ決めてへんけど。岐阜方面かな」


「あっちの方、今夜は降りそうやね」


「うん。そやな」



それから二人で「もうすぐ3年生やなぁ」とか「受験嫌やー」とか、とりとめのない話をした。

外は雪が降り出しそうなぐらい寒いのに、この中は暖かくて……。

ミルク色のガラスで出来たアンティークランプの灯りが店内をオレンジ色に照らして、

サトシ君のカフェラテとわたしのキャラメルミルクティーの香りがこの空間を優しく包み込んでいた。


不思議なぐらい、涙は自然に乾いていた。