ピクンと肩を震わせて振り返る。

そこに立っていたのはサトシ君だった。


「び……びっくりしたぁ……」


学校以外で彼の姿を見たのは初めてだった。

サトシ君は、目を丸くして驚いているわたしの様子に吹きだした。


「ぶっ……。そんな驚かんでもええやん。さっきからずーっと見てんのに、全然気づかへんし。えらい、ぼけっとしてるけど、なんか考え事?」


「えぇ?」


なんだか見透かされているような気がして動揺してしまう。


「そ、そんなことないよ! CD借りに来ただけ。あ。これ借りよっ!」


さっきから手に持っていたCDをサトシ君に見せながらヒラヒラと振った。


「北島三郎……」


わたしの手の中にあるCDを見つめながらサトシ君がつぶやく。

わたしもすかさずCDに目をやる。


「ぎゃっ!!」


なんで、よりによってサブちゃん!

しかも“北島三郎・ベストヒット”て!

まさかのベスト?


「渋いな……。くっくっくっ……」


サトシ君は肩を震わせて笑っている。

がーん……。

恥ずかしい……。

穴があったら入りたいとはこのことだよ……。


真っ赤な顔でアワアワしているわたしに、サトシ君はにっこり微笑んだ。


「オレほんまに喉渇いてんねん。お茶すんのつきあってよ」


そう言って、わたしの手からサブちゃんのCDを抜き取って、棚に戻した。