涙を拭ってドアを開けると、目の前にマリちゃんが立っていた。

心配して追いかけてくれたのかな。


マリちゃんはきっと気付いている。

急に差し替えられた絵の意味を……。


黙っている方がヘンだよね。

ちゃんと言わなきゃ……。


蛇口をひねると勢いよく水が出てきた。

わたしは手を洗いながら話した。

この角度なら表情を見られなくて済むから。


「昨日……シィ君と別れてん。1ヶ月しかもたんかった。あっけないやろ? 前みたいに友達に戻っただけっ……」


そこで限界だった……。

さっき我慢したばかりの涙がまた溢れる。


「ちぃちゃ――ん……」


マリちゃんは、ガバって抱きしめてくれた。


「……うっ…ぐすっ……」


わたしより背の高いマリちゃんの腕の中で、子供みたいに泣きじゃくった。


「早く忘れてしまいたいよぉ……」


「うん……うん……」


蛇口から流れる水がどこかへ行ってしまうように、この想いも涙と一緒に全て流れて消えてくれたらいいのに。