そう。


きっとあれは夢だったんだ。


そして、夢は覚めた。


またいつもの生活が始まる。


ただそれだけのこと。


それだけのことだ……。






「これは……安佐川かしら?」


わたしの絵をさっきから眺めていた女性に声を掛けられた。

誰かのお母さんなのかな。

髪を後ろでアップにして、品の良いジャケットとスカートという服装。

歳はわたしのお母さんより少し上って感じ。



学祭が始まった。

昨日の嵐がウソのように、今日は雲ひとつ無い快晴。



今朝はいつもより早く登校した。

出展するつもりだった絵を差し替えるために。


山田先生は少し驚いていたけど、理由は何も聞いてこなかった。

既に飾ってあった壁からシィ君を描いたあの絵を取り外し、代わりにこの安佐川の風景画をはめた。

タイトルは『故郷』。

すでに記入されていた『優しい白の情景』というタイトルの上から急遽、白いテープを貼り、そこに手で書き直したそれは、ひどく滑稽に見えた。