――いた……。


反対側の歩道に一人で立っているキミを、行き交う人々がジロジロと眺めていく。


真っ赤な顔をして、ポロポロと涙をこぼしているキミを……。


《ほらっ。わたしケンちゃんとかみんなとも友達でいたいから。だから、また食堂に行ってみんなとご飯食べてもいい?》


あの泣き顔からは想像もできないような、明るい声で話し続けている。

オレが今車道を挟んだこちら側にいることなんて、まるで気付いてない。


「うん」


なんでやねん……。

なんでそこまで頑張るねん……。


オレのため?

オレの罪を減らそうとして、傷ついてないふりしてくれてんのか?


サトシが言っていた言葉。

「ややこしいことすんなよ? ちぃちゃんはユカリの友達やろ? オレらの仲間でもあるんやで」

あの言葉の意味がやっとわかった。


キミはそれを一人で解決してくれようとしているのか?

オレやユウやみんながこの別れのせいで気まずくならないように……。

なんでそこまで周りのことばっかり考えるねん。


《ありがと。じゃ、また明日学校でね!》


――プツッ……

その言葉を最後に電話は切れた。


もう、我慢も限界だったのかな……。

彼女は人目も気にせずその場でしゃがみこんだ。


今すぐガードレールを飛び越え、車道を横切って、小さな細い肩を抱きしめたい衝動にかられた。

だけど、今のオレにそんなことをする資格なんてない。


そんなことをしても、また同じことを繰り返すだけだ。

中途半端な愛情をかけてもきっとまた傷つけてしまう。

キミの気持ちに応えることができないなら、オレは何もすべきでは無いんだ。