「なんちゅう顔してんねん」


サトシはドアを開けて、オレの顔を見るなりそう言った。


「ま。入ったら?」


玄関に入ると、先客がいたのか女の子が帰り支度をしているところだった。

彼女は高いヒールの靴を履くと

「じゃね」

とサトシに言い、オレに向かって一礼をすると、ドアを開けて出て行った。


その光景をただ呆然と眺める。


「ごめん。彼女来てたん? え……オレ邪魔した?」


「ええよ、別に。あいつはそういうの気にせーへんから」


確かに。

いかにもサトシ好みの物わかりの良さそうな、キレイな子だった。

私服だったからよくわからないが、年上かもな。



リビングに通され、ソファに腰掛けた。


サトシは母親と兄貴の3人家族。


兄貴は家を出て一人暮らしをしている。

母親は夜の仕事をしていて、オレが来る時はたいてい留守にしている。


「で。なんかあったん?」


サトシは冷蔵庫から取り出した缶ジュースを差し出す。


それを受け取ったものの、飲む気がしなくて

オレは手の中の缶ジュースをぼんやり眺めていた。



「今、ちぃちゃんと、別れてきた……」


「そうなん」


サトシはそれ以上何も聞いてこなかった。