初対面のアサミさんの口から突然出た『ユカリ』ちゃんの名前。

わたしは驚いて、言葉がでなかった。




「あの子……友達の彼氏、平気で取るから」


アサミさんはまっすぐな視線でそう言った。


一瞬、脳裏に浮かんだのは、シィ君とユカリちゃんが抱き合っていた公園でのシーン。

何も言えないでいるわたしには構わず、アサミさんは話を続けた。


「ユカリの彼氏……っていうか、もう元彼やねんけど。佐々木先輩って知ってる?」


「うん。……って、え? 元彼? 佐々木さんとユカリちゃんって、別れたん?」


「うん。わりと最近やけど」


全然知らなかった……。


ユカリちゃん、なんで言ってくれなかったんだろう。

あの時、上手くいってないって言ってたけど、結局別れてしまったのか……。


ユカリちゃんが話してくれなかったことを、目の前のアサミさんが知っていることに、ちょっとショックを受けた。

やっぱり、ユカリちゃんにとってわたしなんて、相談もできないような相手なのかな……。



「どこから話せばいいんかな……」


アサミさんは、わたしがあまりにも情報を得ていないことに、戸惑っているようだった。

アカネちゃんはそんなアサミさんを励ますように、背中を触ってあげてた。

ようやく落ち着いたのか、何かを決心したかのように顔を上げて、それから少しずつ話してくれた。