サトシが帰った後、しばらくベッドの上で寝そべっていた。


ぼんやりと天井を眺めていると、ドアの向こうから母親の声がした。


「直道、電話! ユウちゃんから」


――ユウ?


いつもは携帯にかけてくるのに、なんで家の電話に?


そう思って気づいた。

そういや、今日、昼間にバッテリーが切れてたんだった。


充電するの、すっかり忘れてたな。


なんとなく気だるい体を起こして、母親が手にしていた受話器を受け取った。



「もしもし?」


しばらく沈黙が続いた後、電話の向こうから、か細い声が聞こえた。


《ナオぉ……》


オレの名前を呼んだとたん、何かが弾けたみたいにユウは泣き出した。


「ちょ……何? お前、今どこ? ――ああ、うん。わかった」


電話を切るなり部屋を飛び出した。



「出かけるの? ご飯は?」


玄関で靴を履いている時、背後から聞こえた母親の声を無視した。


それに答える余裕すらなかった。


オレはもう駆け出していた。

彼女の元へ。