いつもの食堂で過ごすお昼休み。

いつものメンバーにいつもの他愛ない会話。


だけど、1つだけ変わったことがある。



誰かがそう決めたわけでもなく、ごく自然にそうなった。



それはシィ君の隣。

シィ君の隣の席はわたしの指定席になった。



誰かと付き合うっていうのは、とても些細だけど……うれしくてちょっとくすぐったいような


そんなことの積み重ねなのかもしれない。




それはいつもと変わらないお昼休みの出来事だった。


「ナオ、髪切らへんの? 前髪、うっとおしいで」


シィ君の正面に座っていたユカリちゃんの何気ない一言。


「別にええやん」


シィ君はそう言うと、気にも留めずに食事を続けていた。


「長すぎるって……」


前から手が伸びてきたかと思ったら、ユカリちゃんはシィ君の前髪を触りはじめた。


こんな風にユカリちゃんがシィ君と絡むのは、これまでも何度も見てきた光景だった。

今までなら、ただ『うらやましいなぁ』って思うぐらいだったのに……。

なのに今、わたしは……。


「あ。ゆるめパーマにしたら? ワックスでクシュクシュにしたらいいねん」


ユカリちゃんは、相変わらずシィ君の前髪をクシャクシャって感じでいじっている。


それをじっと見ていた自分の顔が歪んだのがわかって、慌ててうつむいた。


やだっ……。