「そろそろいこっかな」


時間を確認したんだろう。

ユウは携帯の画面を見つめて独り言を呟いた。

そして鞄から鏡を取り出すと、髪を簡単に整えて、ツヤツヤに輝く口紅(グロスっていうのかな?)を塗り直した。


「じゃね」


そう言って立ち上がる彼女に、聞かなくてもいいことを聞いてしまった。


「今から出かけんの? もう、8時やで」


「だって、今からしか会えへんねんもん」


ふーん。

オレんとこに来たのは、男に会うまでの暇つぶしだったってわけね。


「あんまり遅くなんなよ」


……って、オレはユウのオカンか。


「はーい」



去っていく背中を見送った。

男と会う前の彼女はあんな顔してんだな。


きわどい服も……

甘い香りも……

今にも誘惑しそうな唇も……


全部、そいつのためなんだな……。