「あ。あれ? 白石さん? 今日はちぃちゃんだけじゃなかったんや」


ケンジ君がマリちゃんを見て驚いたような顔をしている。


「わたしがおったらあかんのー?」


「だって、白石さん、美術部のお茶とか飲んだら怒るもん」


「当たり前やん! 部費払ってよ! 部費!」


ふたりの掛け合いに、シィ君もわたしもクスクス笑ってる。

わたしのお菓子目当てに美術室に来るようになって、ふたりはマリちゃんともすっかり仲良くなっている。



準備室に入って、カップを2つ用意すると、よく冷えた麦茶をそこに注いだ。


「もうー! ちぃちゃんは、ほんまに甘いんやからー!」


マリちゃんは呆れ顔だ。

苦笑いしてカップを差し出すと、よっぽど喉が渇いていたのか、ふたりとも一瞬で飲み干してしまった。



「ちょっと休憩……。オレ、マジ死ぬ……」


シィ君はパタンと机につっぷしてしまった。

いつもフワフワしてる長めの前髪はシャワーでもあびたかのように、汗で濡れている。


なんか可愛いな……。


こんな無防備な姿見せられたら、頭をなでて、ヨシヨシってしたくなる。
(……なんて、絶対できないけど)


よっぽど疲れてるんだなぁ。

こんな炎天下の中、グラウンドの気温はいったいどれぐらいなんだろう。

想像しただけで、クラクラしてきそう。