ゆっくりと頭を上げた先に居たのは、恐れていた教師ではなく、クラスメイトであり、幼馴染の『瀬尾隼人』だった。

声の持ち主の正体を知って、思わず息を吐く。それと同時に、その場にへたり込んでしまった。


「どう?似てたでしょ?数学の速水先生と」


子供のように悪びれもなく舌を出して見せる隼人を、下から睨みつける。

けれども当の本人な全く気にする気配などなかった。


ぺたり、ぺたりと上靴の底を鳴らしながら、私の目の前までやってくる。


「俺も遅刻組だから安心して」


まっすぐに伸ばされた手を、一瞬迷ってから強く握った。