ようやく辿り着いた教室は、もぬけの殻だった。


慌ててコートを掛けて、机の横に鞄を引っ掛ける。


黒板に書かれた『進級おめでとうございます』の文字を尻目に、踵を返したその時だった。



「和泉カレン!何時だと思ってるんだ!」



不意打ちで飛んできた声に、大袈裟に肩を揺らす。すみません!と声の主を確認する間も無く、頭を下げた。