北海道の春は遅い。


暦上の季節はもうとっくに春だというのに、あちこちに雪が残っている。

ブレザーのポケットからスマホを取り出して、時刻を確認する。


「……やばい」


デジタルの時計は、始業式の開始5分前を示していた。


通い慣れた道を全速力で駆け抜ける。

それほど運動が得意ではないから、すぐに息が上がる。

遠くからチャイムの音が聞こえてくる。


「もう、むり……」


息も絶え絶えに必死に足を動かすと、丁度反対側の方から誰かが近づいてくるのが見えた。