「暫く歩いてなかったから……。筋肉が随分衰えたみたいで……罰が当たったみたい……」
今にも消えそうなか細い声で、ゆかりさんは言った。
「……暫く歩いてなかった……?」
どういう意味……?
ゆかりさんは遠くを見るように空を見上げて言う。
「歩けなくなったって、嘘」
「嘘?!」
「私、すごく欲しかったの。秀明のこと……。貴女のことは弟から聞いて知ってたわ。だから私、弟にも医者にも嘘をついて歩けない振りをしてたの」
ゆかりさんはそう言うと私を見て、満面の笑みで笑った。
でも……ひきつってるのが分かる。
でも……許せない。
ゆかりさんの目の奥が悲しそうでも、それが分かっても嘘をついたことは許せない!
「騙したの?シュウのこと、騙してたの?!」
少しずつ怒りが大きくなる私を見て、ゆかりさんは無表情で言った。
「そーよ。だって欲しかったんだもの。貴女よりずっと前から秀明が好きだった」
「だからってそんなことしていいの?!だからって……」
悔しくて、
すごく悔しくて涙が出た。
この女がついた嘘で私とシュウは引き離されて、裕介を父親のいない子供にしてしまったんだよ?!
許せない。
絶対に許せない!!



