私はそう言って部屋に入ると、ソファーに座る。
父親の顔を見ると、さっきまでの笑顔は消えていた。
「誰の子供だ?」
「……シュウ」
「……おろしなさい!」
「もう無理だよ。無理じゃなくても、おろさない」
「父親がいない子を産んでどうするんだ!」
父親の怒鳴り声で部屋の空気が一気に凍りついた。
母親がなだめるように父親に言う。
「もうおろせないし、倫子もひとりじゃ育てられない、協力してあげましょ?」
「……産むなら二度と帰ってくるな!出ていきなさい!!」
「……分かった。ごめんね……」
私は部屋を出て服を着替えると、玄関に向かう。
母親だけが私の後を追い、玄関で言った。
「お父さんも急なことでビックリしてるのよ。日にちが経って落ち着けば、又変わってくるわ」
「……。産まれたら連絡するね」
私はそう一言だけ残し、涙を堪えてアパートに向かう。
泣かないよ。
私が決めたことだもん……。
なにがあっても泣かない。
きっと、これからもっと辛いことが待ってるんだ。
こんなことで泣いてたらいけない……。
もっと強くならないと、赤ちゃんも守れない
そうだよね?
シュウ。



