「お帰り。ご飯は食べたの?」
「……うん。お父さんは?」
「珍しく出張でいないのよ。寒いから早く部屋に入りなさい」
部屋に入ると、母親はすぐにお茶を入れてくれて、私はキッチンにある椅子に腰をおろしてお茶を飲む。
「……話ってなに?」
私の問いかけに母親は少し黙ると、私の顔をジッと見て、ゆっくりと口を開いた。
「……倫子、なにか隠してることはない?」
思いがけない質問に胸がドキンとする。
隠してること……?
お母さんは私の妊娠に気付いてた?
そんな訳ないよね??
時計の針の音がやけに大きく聞こえて、どう答えていいのか分からない私に、母親はもう一度問いかけた。
「勘違いかもしれないけど……妊娠してるんじゃないの?」
なんで……分かるの?
まだ誰にも話してないのに……。
「……どうして?」
「前に倫子が家に来たでしょ?そのとき、なんとなく……ね。もしそうなら倫子から話してくると思ってたんだけど、あれから全然だし、ずっと気になってたのよ」
頭が真っ白になって、でも言わないといけないことは分かってて……。
私は小さな声で言った。
「妊娠……してる」



