そして家に着き、私は元気よく玄関を開けた
「ただいま!」
母親はすぐに出迎えてくれた。
「お帰り」
「お母さん、お腹空いちゃった。なにか食べる物ない?」
「あるわよ、いっぱい」
笑顔で話す私に、母親も笑顔で答える。
以前シュウと別れて、手首を切ったときみたいに心配をかけないように。
シュウと付き合っていたことを、否定されないように、私は精一杯明るく演じる。
母親とキッチンに向かうと、キッチンのテーブルの上に沢山の料理が並べられていた。
「倫子から電話をもらって作ったのよ」
「美味しそう!食べていい?」
「いっぱい食べなさい」
私は母親の手料理を口に運ぶ。
「やっぱりお母さんの料理には敵わないや」
「何十年も作ってきたんだもん。倫子には簡単に負けないわよ」
嬉しそうに母親が言った。
何十年……。
私はその何十年の内の一日にも届かなかった。
「……お母さん、私、シュウと別れちゃった……」
母親は黙ったままうなずく。
「……シュウから電話あった?」
「……昨日ね。謝りの言葉と、『僕が言える言葉じゃないけど、倫子さんをお願いします』って……」



