「倫子?」
「……うん。今から……帰るね……」
「そう。気を付けて帰りなさい」
「……うん」
電話を切るとホームにある椅子に座る。
なにも聞かなかったお母さん……。
シュウが電話で言ったのかな?
もし言ったのなら、なんて言ったんだろう……?
暫くすると新幹線が来て、私はそれに乗り席に座る。
人の話す声がBGMみたいで心地がいい。
滋賀に帰ったら、又仕事をして新しい恋ができるかな……?
楽しいこと、いっぱいあるかな……?
でもね、シュウ。
今、私の心の中は空っぽだよ。
新幹線の中でウトウトしていて、滋賀に着くまでの時間はあっという間だった。
私は新幹線を降りてバス停に向かう。
シュウがいないこの町も、シュウとの思い出が強く焼き付いていて、胸が痛む。
幸せだったあの頃、今の私を想像することなんてできなかった。
バスに乗っても、シュウとの思い出が痛くて、早くバスを降りたくなる……。
それは家に帰ってもきっと変わらない……。
仕事を始めて落ち着いたら、家を出よう。
そして、ひとり暮らしをしよう。
シュウとの思い出に縛られない場所で、新しくやり直すんだ。



