「……まぁ、これが一番確実だよね…。」

ハルは一人 静かに夜の学校で呟いた。
片手にはペンライトを握っている。
制服の上から、ベージュのガウンを羽織ってきたが、やはり少し寒い。

『ねぇ、お姉ちゃん♪ 遊ぼ。』
どこからともなく聞こえる幼い声。

「!? ……まさか…。」
『何するー? 隠れんぼ? 鬼ごっこ?』
「っ…! ご、ごめんね。私は…… 」
『えー。お姉ちゃんが勝ったらお願い事、叶えてあげるのに。』
ハルはその一言に息を呑んだ。

「……何でも?」
『もっちろん♪』
「………わかった。やろう。」
『じゃあ隠れんぼね。私が鬼。 お姉ちゃんが一時間逃げられたら勝ちね。』
「……わかった。」
『じゃあ、スタートぉ!!』
ハルは教室の掃除用具入れに隠れた。


しかし、十五分もしないうちに、

『みーぃつけた♪』

用具入れが空き、幼子の楽しそうな声が聞こえる。

ハルの顔は、ただただ恐怖の色に染まっていた。

『ねぇ、お姉ちゃんの右脚、ちょーだい?』
その声の直後、

「きゃああぁぁぁぁ!!」

昨日に次いで、また今日も夜の学校に悲鳴が響いた。

『ふふふ。お姉ちゃんの右脚、も~らった♪』
後に残るのは、少女の楽しそうな声だけだった。