「ねぇ、ミサキ~。」
「何? 用がないなら呼ばないでよ?」
私の首に腕を回しながらユウナは言った。

「違うって~。今日、ユキの家 行かない?」
「…ユキが居ないんだから意味ないでしょ?」
「うんん~。用があるのはユキの親。何か知ってるあかもでしょ?」
「ほぼないと思うけどね。」
「い~じゃん。行こーよー。」
「はい はい。わかったから。 とりあえず、急いで帰る支度しなよ。」
「はーい。わっかりましたぁ!」
ユウナは、すぐに教科書やノートを自分の鞄にガサッと入れ、その他諸々もポイポイっと鞄に収まった。その間、わずか 一分足らず。

「ミサキ! 用意出来た! 行こっ!」
斜め前の遠目の席からユウナは私に手を振り、大声で言った。
「はいはい、わかりましたから。」
私がしぶしぶ返事すると、
「…大変だね。ミサキも。」
「まぁね。でも、楽しい事も多いよ?」
後ろの席のハルが話し掛けてくれた。
「……ふーん。そっか。」
「うん。じゃあね。」
私は鞄を肩にかけてユウナの元に行き、ユウに手を振ると、手を振りかえしてくれた。



「……で、ユキの家についたけど………?」
「…インターホン 押そっ?」
「……うん。」
私は目の前にあるインターホンのボタンを押した。しかし、

「………………出ない、ね。」
「……うん…。」
「出掛けてるんじゃない? ユキを探しに行ったりとかさ。」
「やっぱ そっか…? また出直す?」
「私はどっちでも?」
「まぁ良いや。今日は諦めよ。また明日にでも来よっかな。」
「私は来ないからね。」
「え~。ケチ。」
「部活があるでしょ。仕方ないの。」
「ちぇ~っ。しょーがないなぁ。」
「はいはい。とにかく今日は帰ろうね。」

私とユウナは、肩を並べて二人の家に向かって歩き出した。