「ね~、ミサキ。ユキとナナミ、 知らない?」
席に着くと、一番に親友のユウナが話し掛けてきた。
「知らないけど……? 今日はまだ来てないの?」
「うん…。あの二人に限って遅刻なんてことはないと思うんだけど……。」
「そりゃ、家から学校まで徒歩三分だからね。」
「あ~、あの二人が居ないと物足りないぃ~。」
「誰が休んでも同じ事言うんでしょ? 先生に聞いてみれば? 仲良いから一緒に旅行にでも行ったんじゃない?」
「残念ながら、先に聞いてきたよ。何も聞いてないってさ。」
「んじゃあナナミの彼氏にでも聞けば? ほら、自分の席でのんきに本読んでるし。」
「……リョーマ! ナナミは!? 彼女は一緒じゃないの?」
ユウナがリョーマに言うと、周りがどっと笑った。
…しかし、リョーマの回答は辺りを静まりかえらせた。
「……何も、聞いてないよ…。 昨日は家にも帰ってないって…。」
難しそうな本から顔を上げたリョーマは、ゲッソリと青い顔をしていた。
「…ま、まさか~。冗談キツイぜ! リョーマ。」
一人の男子生徒がふざけながら言った。
「冗談でこんな事言うかよ!!?」
いつも静かなリョーマが勢い良く立ち上がり、大きな声で言った。
「……今日は、四月一日じゃないよね…?」
「一日どころか、四月でもねーよ。」
「とっくにすぎてるだろ?エープリルフールなんてさ。」
「……じゃあ、本当に…?」
再び教室はしんとしてしまった。
…そんな静寂を破る様に、チャイムが鳴り、生徒達は何も言わず席に着いた。