「……………ユウナ。みんな、どこに居ると思う?」
「………ん~、誰も入れないし、入らない場所?」
「具体的には?」
「えぇ……んじゃあ、屋上の踊り場…?」
「…なるほど、ね。行ってみるか。」
二人は、階段を登って行く。

カタン… カタン…と、階段には二人の足音が響く。真っ暗な学校と言うだけで不気味なのに、足音も加わり、更に不気味だった。

「………み、ミサキぃ…。 まだ?」
「あと少し。もう三階だから。」
二人は、互いに励まし合いながら階段を登った。


「……………開けるよ。」
ミサキがドアノブに手をかけ、ユウナの方を見た。ユウナは静かに頷く。

キィィィ………、とドアを開く音が虚しく響いた。ドアの向こうは、漆黒の闇で、一歩踏み出すのに二人は躊躇した。しかし、ミサキはペンライトを左手に、踏み出した。
向かい側に、もう一つ、ドアが見える。あのドアの先が、屋上だ。

「み、ミサキ……………。ミサキぃ…!!」
突然、ユウナが叫んだ。

「ユウナ!? どうかし… た………。」
ミサキは振り向き様にそう言ったが、口を紡いだ。

二人が見た光景。それは……………



所々を赤黒く染めた女子学生の姿だった。
二人は、叫ぶ事もできず、ただ立ち呆けていた。

『………あ~、見つけちゃったか。』
後ろから聞こえる、あの事。幼い、少女の声。

『見つけちゃったんなら、しかたないよね。お姉ちゃんたちは帰らせないから。』
少女の声はするのに、姿はまるで見られない。

バタン…!! と、急に音がした。どうやら、さっき開けておいたドアが閉まった… いや、閉められたのだ。
ミサキがドアの方に光りを当てると、そこには、右腕、左腕、右脚、左脚、胴体がバラバラの人が居た。不思議な事に、バラバラなのに、一人の人間だとわかった。そして、もう一つ………

あの幼い少女の声は、この人物が発している。これは確実ではないが、明らかだった。

『……………ねぇ、お姉ちゃん。お姉ちゃんの命、ちょーだい?』
バラバラになった右手の人差し指がユウナを指している。バラバラになった左手には、月明かりで鈍く光る物体が握られていた。

「……………み、さき………。」
ユウナはすがるようにミサキの名前を呼ぶが、ミサキもまた、声が出せないぐらいに恐怖を感じていた。

『それから、お姉ちゃん。』
次にその人差し指が指したのは、ミサキだった。

『お姉ちゃんの… 顔、ちょーだい?』
その言葉に、ミサキは表情を失った。


次の瞬間、二人の目に映ったのは、赤い、綺麗な、液体。それを血だと認識するに、何秒もいらなかった。

ゴトン、と重い音を聞いたのは、あの声の主だけだった。


『お姉ちゃんの顔と、お姉ちゃんの命、も~らった♪ 』
少女のおもちゃは、全て揃った様だ。


『…あぁ、私も、これでやっと……………!』
少女の声は、感無量とでも言うかのように、七つの死体が転がる部屋に響いた。