「ねぇ、母さん。」
「どうかした? ミサキ。」
真新しい住宅街の一軒家。その家に灯る灯りは、二人の家族の照らしていた。

「学校に忘れ物しちゃってさ。取りに行ってくるね。」
ミサキはダイニングテーブルに頬杖を付きながら答えた。

「もう遅いし……………。明日じゃだめなの?」
「うん…………。今日の宿題に使うし……。」
ミサキは、少し目を伏せて答える。

「………送ってってあげよっか?」
母は皿を洗う手を少し止めて言った。

「うんん。大丈夫。」
「そう………? なら、気をつけてね。」
「うん。じゃあ、行ってきます。」
ミサキはリビングから玄関に向かった。ひんやりした空気がミサキを包む。コートに手袋、それに藍色のマフラーを着けて、ミサキは玄関を開けた。


夜空を見上げると、いくつかの星が瞬いていた。その光りは、誰かを待っているようでも、誰かに追い付こうとしているようにも見えた。ミサキがフゥ、と一つ息を吐くと、白くなった。まだ昼間は暖かいが、夜になると相当寒い。

ミサキは、両手をコートのポケットに突っ込んで、夜の学校へ歩きだした。

今日の空は、ケイスケ君と帰った日の空みたいに見えた。