『最終下校の時間になりました。まだ学校にいる人は早く帰りましょう。』

誰も居ない廊下に、機械的なアナウンスが響く。日はだいぶ西に傾いて、一番星まで輝いている。木枯らしが、桜の落ち葉と寂しく踊っている。

『……お姉ちゃん、遊ぼ?』

誰も居ない廊下に幼い声がこだまする。

こだました声は、まだ帰らなかった生徒の耳に入る。

ある二人の女子は顔を見合せ、ある男子は無視して歩く。また、ある女子は足早に耳を塞いで駆けて行く。

『隠れんぼね。私が鬼するから、お姉ちゃんは隠れて~。』

二人の女子生徒は異変に気付き、慌てて逃げようとするが、窓は開かない。玄関も開かない。窓を割ろうとしても、割れない。二人は怖くなって、駆け出した。とにかく走った。

しかし、その努力も無駄だった様だ。

『わぁい。お姉ちゃん達から来てくれるなんて!
お姉ちゃん達、優しいね。まぁ、その優しさが……

身を滅ぼすんだけどね♪』

楽しそうな少女の声。

『ねぇ、お姉ちゃんたちの腕、ちょーだい?』

続いて聞こえたのは……

「「ぃ、いやぁぁぁぁ!!」」

女子生徒の悲鳴の二重合唱だった。


『今日はついてるな~♪
二人もお姉ちゃんが居てくれたなんて。

お姉ちゃんたちの腕、も~らった♪』

少女の声は最早悪魔の様に聞こえる。もっとも、


聞いている人間が居れば…、だが。