「りゅ、龍様まさか……っ?!」


森川が驚いてこちらを見る。



「なるべく急いで家に戻れ。濡れてるし冷えてる」



「猫をお求めでしたらそんな捨て猫ではなく…っ」



「いいから」



俺のぴしゃりとした言い方に、申し訳ございません、と車は静かに動き出した。




「……結菜…」




どしゃぶりな外を眺めながらぽつりと呟く。



茶色がかかった柔らかな髪と、勝ち気にちょっとつった大きな瞳が…




「お前に似てる」




膝の上で丸くなっている子猫を優しくなでる。
  



「……森川、俺学校行く」




運転席にむかってそう言うと、森川はほっとしたように溜め息をついた。



「やっと行かれるご気分になられましたか!それはお父様もたいそう喜びに…」




「そっちじゃねーよ」




「……え?」



俺は子猫にそっと視線を戻した。


 
「結菜の学校」



思わずふっと笑みがこぼれる。



「こいつを拾ったのも結菜を家に呼ぶ口実つくるため」