「でもごめんね、あたしもう行かなくちゃ」



立ち去ろうとする彼女に猫がみゃあみゃあ鳴いて引き止める。



それに気づいた彼女のうーんと困るいじらしい様子が、俺の心をかき乱した。



そのとき、



「結菜ー!なにしてんのよ遅刻するわよ?!」



「結菜ちゃーん!今日全校集会あるんだからはやくぅ~!」



友達だろうか。



後ろから声をかける2人の女の子に、結菜と呼ばれた女の子ははぁいと返事をかえした。



ごめんね、と猫の頭をなで、段ボールへそっと戻す。そして、

 
「風邪ひいちゃだめだよ」

 

持っていた傘を段ボールにかぶせるようにしてそっとおくと


「すいませぇーん相合い傘してもらえませんかね~!?」



と、友達の元へ走っていった。



「はぁ?!雨降ってんのに傘猫にあげるとかあんたばかじゃないの?!」


「だって風邪引いちゃかわいそうじゃん?」


「その前に結菜ちゃんが風邪引いちゃうよ?!」


「まぁ、ばかは風邪引かないっていうわよね」


「あっ、そっかぁ。じゃあ大丈夫だねっ」


「ちょ、ふたりとも?!」



いじられながらも友達2人から傘を半分ずつ与えてもらい、彼女は楽しそうに遠ざかっていった。