そのときのあたしにはどうしても玄野くんの気持ちを考える余裕はなかった。


これをされたときの玄野くんの気持ち、どうして考えられなかったんだろう…。

ほんとばかだ、あたし……


「気持ちごちゃまぜになってるかもしれないけど……でもひどいことしたのにはかわりないよ。今すぐ謝りなさい」


綾乃ちゃんの言うとおりだよ……

学校について靴をはきかえる。

すぐに謝ろう。


なのに……教室に入ってすぐ、綾乃ちゃんが言った。


「でも玄野くんまだ来てないわね」


隣の席はぽっかり空いている。

当然いつもの人だかりもない。


「いつも私たちより先にいるのにね」