「あのマフィン、バレンタインのチョコって言ってたけど……」
「う、うん」
一体、なにを聞かれるんだろう?
私の心臓の鼓動は加速する。
「本命、って思っていいの?」
「……えっ!?」
恥ずかしそうに私から目をそらす桜田くんに私の胸のドキドキが増した。
「うぬぼれても……いいのかな、俺」
次にそう言って私の目をとらえて離さない桜田くんは本当にズルいと思う。
私は少しうつむいて、ゆっくり頷く。
「……ひゃっ!」
その瞬間、私は温かいものに包まれる。
わ、私、今、桜田くんに抱きしめられて……っ!
「さ、桜田く……っ」
「俺も好きなんだ、崎本さんのこと」
「……えっ!?」
誰もいなくなった教室には、私と桜田くんの声が響く。
桜田くんの言葉を聞いた瞬間、時間が止まったような感じがした。