雨上がりの空は日差しがきつい。
じりじりと容赦なく照りつける日差しは、ちりちりと私の肌を焦がしていく。
まだ春だというのに気温はすでに夏模様。
アスファルトの道路もいつも以上に熱を持って、このままじゃ夏はきっともっと暑くなるんだろう。
そう考えただけで脱水状態に陥りそうになって、くたっと地面にへばってしまう。
黄色いたんぽぽが熱さを纏った風に吹かれて、少しだけ揺れていた。


「暑いよぅ」
「またへばってんの? お前」


そう頭の上から声を投げ掛けられて、情けない顔をゆっくりと上げた。
そこにいたのはいつもの彼。
茶色く染められた髪は前髪が目元に掛かっていて、首を傾げた彼の額からさらっと零れ落ちた。
襟足まで伸びた髪と首の間に手を入れて片眉を上げる。
端整な顔立ちは崩れることなく、笑みを湛えた。
そのまま、しゃぁねぇなぁ?と呟くと彼は徐にカバンを漁り始めた。
照りつける日差しに彼の白いシャツが反射して少しだけ眩しい。
だらしなく着こなした制服のズボンの裾は地面に引き摺られてぼろぼろだ。ポケットからはサルのマスコットがたれている。きっと携帯のストラップなんだろうけど、なんだか彼にすごく似合っている気がしていた。
気が付けば視線を合わせるように隣にしゃがみこんで私の顔を覗き込んでいる。


「だって暑いもん……」
「ほれ、水」


そう言って水を分けてくれるのはいつものこと。
彼はこの近くの高校に通う男の子、櫻井瑞貴と言うらしい。
らしい、というのは文字通り伝聞推定ってわけで実際彼から名前を聞いたわけではない。
カバンからちらりと見えたプリントに書かれていた名前だ。
まぁ、十中八九彼の名前だろう。