依頼屋





彼女が赤か黒のマーメイドドレスでかなり迷っている


…どちらにせよ露出が激しいな


仕事の事を考えればシフォンドレスを選ばないのは当たり前なのだが


個人的にはリゼリアにマーメイドは着せたくない


美しすぎて、飢えた野獣に食われてしまいそうだからだ


自分の中での葛藤の末俺はどちらかというと露出の少なかった黒にしろと言った


赤を着ている夫人が多いかはよく分からないが


リゼリアが納得してくれたのでよしとしよう


リゼリアは試着室に入った


その間俺は昨日を思い出していた


普段は穏やかであまり情緒が激しくないのだが


帰る前から様子がおかしく、ローズが花を渡した途端


声を荒げて走って行ってしまった


俺は慌ててその後を追いかけ何があったと聞いたが拒絶されてしまった



“私を利用しているだけの人に…


そんな人にする話しなんてない”


リゼリアの苦しみを受け止めたいのに


そのチャンスを奪ったのは他でもない自分で


俺はただ謝って抱きしめるしかできなかった


リゼリアは泣いていた


俺にはその涙を拭く資格なんてなく


ただ自分の無力さを痛感していた