8月26日
私は黒い小さめの仏壇に手を合わせる。
私のお父さんは2年亡くなった。今日はお父さんの命日だ。
私のお父さんは自慢じゃないけど今でも知らない人はいない、というぐらい有名なシンガー・ソングライターだった。
お父さんの葬儀では会場中の人たちがみんなハンカチを手に取り泣いていた。
そんなお父さんのようにみんなに愛される歌手になるのが私の夢だったのに……。
私の夢はもう叶わないと言っても過言ではない。
だって私。
難聴なんだ。
私の難聴は進行性で、時間がたつにつれてだんだんと聴力が落ちていく。
そんな私の未来は暗いよ。
嫌だって言っても病気の進行は止まらない。
かと言って、この病気は死までは至らない………
だから私はこれから大人になっても真っ暗なトンネルの中で過ごさなくちゃいけない………
私は歌が歌いたかった………
あの憧れの舞台に立ったキラキラした世界をみていたかった。
恋とかも……したかったなぁ。
もっとこの世界をみていたかったな。
もっと……もっと………
自分の目で………。