僕の涙が止まると、春華は僕の隣に腰掛けた。
「裕くん……私のお家、シングルマザーなんだ。」
春華はポツリと漏らした。
「お父さんは私が生まれたときにもういなかった。」
そんな……
「私、裕くんがちょっと、羨ましい。私、兄弟もいないし……いつも家にひとりなんだ。」
春華は少し、寂しそうに笑いながら話した。
「私はそんなお父さんのこと、ちゃんと悲しめてない。」
そういった春華の表情は暗くて見えなかった。
「だからね、お母さんにして貰えたことはすこしかもしれない。でも、裕くんは幸せだよ。」
そうか……
ちゃんと僕にも母さんがいたんだ。
僕はこんなところでウジウジしているべきじゃない。
ちゃんと、乗り越えるべきなんだ。
風でブランコがギィと音を立てて揺れた。
「ふとした瞬間に……視線がぶつかる…………」
口をついて出たのは有名な歌のフレーズ。

