え、高嶺の花が僕の彼女⁉︎

僕は春華に手を引かれるまま、気付いたら近くの公園に来ていた。



玄関で靴を履いた記憶もない。



胸いっぱいに広がる、この空っぽの感じは何だろう?


もともと何もなかったじゃないか。




「裕くん、泣くことは強さだよ。」



「え…」



「泣くから皆乗り越えられる。陽、心配してた。裕が一度も泣かないって。向き合わないと、泣けないんだよ。」




春華はそっと、僕の肩を押してベンチに座らせた。



「あのね、陽から裕くんの家のことは少しだけ、聞いてたの。でも、本当にお母さんとの思い出ひとつもない?」



とんとん。



立った状態の春華に抱きしめられ、背中を押された。




あ……