困らせた。


不安になって隣を歩く春華の顔を見たけど、暗闇で表情はよく見えない。


長い睫毛が瞬きに合わせて二回、三回上下したのだけわかった。



「裕くんだけじゃない。私も一緒。きっと、誰だってそうだよ。」



心の中がまた、暖かくなる。



どうして、こんなに安心するのだろう?
これは一体どんな作用なんだろう?



「…ありがとう。」


僕はそっと、春華との繋いだ手を離した。



いつの間にか春華の家の前に着いていたから。

「じゃあ。」



「裕くん、手出して。」



「ん?」

ぎゅっと、握られた。



「大丈夫。裕くん、大丈夫。」





春華の手は暖かかった。



加速する鼓動とともに春華の手の熱がゆっくり僕の手にうつる気がした。