【月曜日】

彼を見つけなければならない。
私は決意した。

彼は私の高校の制服を着ているのだから、同じ高校のはずなのだ。
同じ高校ならば、本気で探せばすぐ見つかるだろう。



「この高校で、まつ毛が長いイケメンの男の子っているかな?」

私は加奈に聞いてみた。

「え、めっちゃ抽象的で分からないよ!?」

うん、私も聞いてからそう思った。
これは、意外と難しいかもしれない。

加奈は私がなぜその男の子を探しているのか知りたがったが、電車で見かけて気になっているとは言えなかった。

そもそも、私が日曜日に大人を装って外出していることを知っているのは、弟くらいだ。
日曜日に加奈や他の友達から遊びの誘いを受けても、何かと理由をつけて断ってきた。


簡単に見付けられると思った憧れの人は、一日かけても見付けることができなかった。

思えば、電車で彼を見かけるようになって一年くらい経つ。

であれば、――普通なら、一回くらい学校ですれ違ってもいいのではないか?
私の通う高校はそれなりの生徒数を誇ってはいるが、一年間もあって全く会わなかったというのも変に思える。

彼は、何年生だろう?
大人っぽくも見えるし、どこか幼いような印象も受ける。

(年上、だったらいいなぁ……)

そんなことを思いながら帰り支度をしていると、幼なじみの慶太が話しかけてきた。

「坂ノ上、担任が呼んでるぞ」

「そう、ありがとう」

「お前、最近上の空だな。何かあったのか」

「別になにもないよ」

「そうは思えないんだけどな」

慶太は少し間を置いて、こくりと喉を鳴らして声を発した。

「日曜日空いてるか?」

「空いてないけど、なんで?」

「そうか、空いてないならいいんだ。何でもないよ」

「そうなの?じゃあ、先生のとこ行くから、またね」

私は慶太に手を振り、職員室へ向かった。