【日曜日 AM10時】
ちょっと家を出るのが遅れてしまったので、駅まで走らなければならなかった。
走ったことでセットした髪も崩れてしまい、息もあがってしまっていた。
乱れた髪と息を整える時間もないまま電車に乗ると、いつもと同じ場所に、彼はたたずんでいた。
ふっと、彼の顔を見る。
すると――彼も私の顔に目を向けた。
目が合った。
その瞬間、胸が締め付けられるようになる。
走ってすでに赤いはずの顔がさらに真っ赤になった。
そんな私を見て、かどうかは分からないが、彼はくすりと笑った。
(……不覚)
私は彼と少し離れた位置にある席に座り、うつむいていた。
あれ、絶対私のぼさぼさの髪とか顔を見て笑ったよね……。
恥ずかしい。
名前も知らないうちから嫌われてしまったのではないだろうか。
……それよりも、名前も知らない人のことを好きになってしまっていたらしい自分が情けなかった。
