「出来る訳ないでしょ、今更!」

「一歳差くらいでそんな弱気になっちゃダメよ」

「だーかーらー!」

「ふふ。お母さんは応援してるからね?」

「う……」

「多分お父さんも応援してくれるわよ」

「どうせ、サヤと親戚になれるからでしょ」

「その通り。ほんと直樹はあの家族が大好きだからね」


 クスクス笑いながらキッチンを片づけていく母を横目に、美月はコンソメスープを啜った。


 不思議なくらい、花園と時枝と早河の五人は強い絆で結ばれている。

 自分達やサヤと奏多、克利ともそんな風になれるだろうか。そんな事を思う。

 出来るなら一生付き合って行きたい。そう思うくらい美月は、達樹もサヤも奏多も克利も大好きなのだ。


「とにかく、今日はちょっといつもより遅くなるからね!」

「はいはい、ごゆっくり」


 不気味なほどに、にこにこした美香子を悔しがるように見据え、朝食を綺麗に残さず平らげた。


「じゃ、行って来ます」


 灰色のスクールバックを肩にかけて外へ出た。


 クリスマスイヴを明日に控えた冬の日の外は寒い。夏は暑く冬は寒いとは、何とも納得のいかない気候変動だ。


(今日も寒いなぁ)


 心中でぼやくと、非常に寒がりな奏多を思い浮かべ、小さな溜め息をつく。

 年下で身長差が13センチあるだけならまだいいが、どうも彼にはシスコンの気があり、恋愛などには興味がなさそうに見える。

 恋愛に興味が出るのを密かに待っているのだが、一向にその気配は現れない。


「はぁ…」


 思わず零れる溜め息。

 失礼な話だが、祥花にあげる品々は常にささっと決まる。それに対して奏多にあげる品々は、常に祥花の倍の倍の倍かかる。

 どうにか一生使える物、大切にしてもらえる物をと思い、やたら時間がかかっている。


 ここ数日間いろいろな専門店を歩き回っているが、これと言って目に止まる品はなく、クリスマスイヴ前日という今日を迎えてしまった。