寒いなと思えば、窓の外は六花が踊るように静かに舞っていた。


 美月はベージュのブレザーに袖を通し、赤のリボンを結ぶ。

 鏡と向き合ってにっこりと笑う。


(よし、今日もバッチリ)


 栗色のショートカットの髪にピンを挿して完璧だ。


 クリスマス定番ソングの鼻歌を歌いながら階段を降りてはリビングに入ると、母がキッチンからおはようと声をかけて来た。

 美月は挨拶を返しながら所定の位置に着く。すると向かい側の席で半熟の目玉焼きを頬張っている達樹と目が合う。


「なっ、何だよ!」

「別に? 朝から元気だなと思って」

「ふんっ」


 第一次反抗期を未だ延長し続けている達樹はいつもこうだ。

 美月は気にする風でもなく自分のご飯に手をつける。


「お父さんは?」

「まだ眠ってる。昨日、帰り遅かったから」


 鍋を洗いながら美香子は答えた。


 カメラマンである父は、一日のスケジュールは不規則だったりする。

 たまに、二~三日顔を見ない日もある。


「クリスマス前はやっぱり忙しいのねー」


 他人事のように呟き、白米を口に運ぶ。


「お母さん。私、今日はちょっと遅くなる」

「ん?」

「克利と買い物」

「あらあら。クラスの友達とは行かないの?」

「やだよ。みんな彼氏彼女がいてラブラブしてんだから」

「美月は?」

「いないいない」

「奏多君が高校生になるのを待ってるの?」

「ぶっ!!」


 あまりに驚いて、飲んでいた牛乳を吹き出した。

 達樹が避けるように構え、嫌な顔をしている。


「お母さん何言ってんの?!」

「やぁね。バレバレよ。買い物ってのも、どーせ奏多君へのクリスマスプレゼントでしょ」

「ゔっ」


 全て見透かされている事に驚きながらも、落ち込んだ。

 そんなにバレバレの態度を取っていたのだろうかと不安になる。


「今年ももうすぐ終わるし、告白したら?」


 楽しそうに話す美香子を憎らしそうに睨みながら、美月は言う。