「アイス! アイスどこ?!」

「ここ」

「アイしゅー!」

「今はダメだ。祥花を救出するのに時間食って溶けてる最中」

「はぅあぁっ!!」


 ショックを受けた顔で廊下に座り込み、祥花はいじける。が、奏多は無視してリビングに入って行く。


「何よ何よ、アイスあるならあるって言いなよね。そしたら私だってさ」

「おい。ぐずぐず言ってないで手伝え」


 奏多がリビングから顔を出す。祥花は反論出来ず、渋々立ち上がった。

 リビングに入ると、奏多が手際よく袋から品物を出しては分けていく。


「これ冷蔵庫。これ野菜室。これ冷凍庫な」

「タダじゃやんないもーん」


 暑さにやられて自棄を起こしている祥花はフンとそっぽ向く。


「アイスが要らないなら手伝わなくていい」

「あぁっ! やります、やります! やらせて下さいっ!」


 結局、奏多の方が一枚上手だという事を再確認する祥花。

 冷凍庫に物を詰め込んでいると、奏多が祥花を呼んだ。祥花は冷凍庫と向き合いながら、耳だけ奏多の方に向ける。


「トシが明日の午後から市民プールに行かないかって。美月さんと達樹も誘って」

「明日かー。午前だけ部活に参加して午後は休もうかなー。奏多行くよね?」

「断る」

「やっぱり。たまにはいいじゃん、行こうよ」

「面倒臭い。家で勉強してる方がマシだ」

「またそういう事言うー」

「……お前、受験生の自覚ないだろ」

「あるよ、ちゃんと。だから夜は勉強してるでしょ」

「夏休みの宿題な」

「うっ。一日くらい、い~じゃん。行こうよ」

「却下」


 パタンと冷凍庫を閉め、祥花は奏多の方へ振り返る。


「何で! 水着のお姉さんがいるかもよー」

「興味ない」

「はぁうっ! アンタ今、興味ないって言った?! 不健全!」

「……お前アイスなし」

「何で?! ちゃんと手伝ったじゃん!」