未来ーサキーの見えない明日までも。

 音楽教官室に着くなり、里田は祥花を押し込み、鍵をかけた。

 祥花は怯え、ジリジリと後退するが、里田は祥花をソファーに押しやった。一週間前、太股や胸を触られたソファー。

 祥花は目を潤ませ、里田を見つめる。


「そうやって怯えると余計に泣かしたくなるじゃないか」


 教師とは思えない言葉に、祥花は涙を零した。


 こんな人だと思わなかった。こんな人を好きになっていたなんて。

 里田を好きになった自分が嫌になる。


(奏多…っ。大丈夫って言ったじゃん…!)


 全然大丈夫な状況ではない。このままでは犯されてしまう。


「奏多っ……」


 口から零れた小さな言の葉に、里田は反応した。


「奏多…? あぁ、双子の」


 合点がいったように頷くと、祥花の口にタオルを詰め込んだ。


「少し仲が良すぎじゃないか? 昨日も今日も一緒に登校して来て」


 そう言いながら、制服のボタンを一つ一つ外して行く。


「……っ! ふ、っ」


 身を捩りながら抵抗するが、所詮子どもの力。とても大人には敵わない。


 里田の手が祥花の後ろに回された時、バタンッと大きな音を立てて後方のドアが開いた。


 里田は驚いたようにそこへ目を向ける。


「お前?!」


 祥花が一生懸命振り返ると、息を切らし、額に汗を浮かべた奏多の姿があった。

 その姿を捕らえた途端、安堵に包まれた祥花は更に涙を流す。


(奏多…っ)


 来てくれた。そう思うと涙は止まらない。


「お前、どうして」

「こんな事を予想して、アンタがここの鍵を閉めた後に俺が開けておいたんだ」


 そう答えながら奏多は歩みを進め、祥花の腕に回された里田の手を払う。

 それと同時に、祥花は奏多に抱きついた。奏多は祥花を受け止める。


 ぼろぼろに泣きながら震える祥花はあまりにも痛々しく、もっと早く来れればと、奏多は自らを責める。


 また傷つけてしまった。