翌週、連日のアルバイト地獄がおわり、久々の休日が訪れた。


「琥珀ー! 琥珀!!起きて!!」


「む、…何なのだ…朝からうるさいぞ……」



「休日だよ!今日」



「うむ。そうだなー…だからあと30分は寝てもいいだろう……」

すう……


「こらー!寝るな!」


「起きてる、起きているぞ、…ほら……」


「うわ…やめて、その目を開けたまま寝る得意技……」


「とにかく起きて!!出かけようよ!」


せやーっと布団を剥がす。


すると琥珀はむくりと起き上がった。


「出かけるのか?今日?」


「うん!ひっさびさの休日だから、息抜きにね!」


「どこで遊ぶのだ?」


「ショッピングしよう」


「…お金が無いのにか?」


「この間給料入った!」


「…………いきなり使ってしまうのか?」


「な、何その顔……。いいじゃない……」


「俺は貯金をしておいた方がいいと思うぞ」


「い、いくらお金無いって言っても、一円も、使っちゃいけないってわけじゃないし!
おいしいもの食べるくらいは……!」


「なんだ。俺の作ったご飯じゃ不満なのか!?」


「へ?いえ…むしろ琥珀が作るご飯以上においしいものに出会ったことがないです……」

 
何しろアンドロイドだからか。調味料の配分に狂いがないのだ。

私好みの味付けを熟知していて、いつも完璧なご飯を作ってくれている。


けれど、本人には人間のような味覚がないと聞いたことがある。

“おいしい”という感覚は、なとなく分かるらしいけど。



「とにかく行こうよ?琥珀、いつも引きこもってばっかりじゃない」


「な、何を言う!引きこもってるわけではないぞ!……単に外にでる必要がないだけであってだな…」


「たまには紫外線も浴びないと!」



「だが浴びる必要のない身体だがな」



「ぐぐ…い、いいじゃない!私、たまには琥珀と出かけたいよ。一人でショッピングしても全然楽しくないし」


「むぅ……………」



「ねーお願い琥珀さまーー」



「……仕方ない。行こう」



琥珀は渋々頷くと、パジャマに手をかけた。


「わ!こら、いきなり脱ごうとしないでよ……!」

「ん?」


「私が出ていってからにしてよ、着替えは」



「何故だ?」



「女子の前でいきなり脱ぐなんてセクハラに等しい行為よ!」


「セ、セクハラだと?……しかし、博士の研究の付き添いで俺の裸など見慣れているではないか」


「それとこれとは別」


「うむ。…理解し難い感覚だな。人間だったらわかるのだろうか」


「理解しなくてもいいからとにかくいきなり脱ぐのはやめてよね。今でてくから!」


「うむ、了解した」




「すぐ支度してね。休みの時間は一分でも無駄にはできない!」

「わかったわかった」


「一回でいい」


「む、わかった」