ー…そうして待ちに待った休日。
私はいつもよりほんの少しだけ、気を使って身支度をした。
「琥珀ー?着替えたー?もうそろそろ東が迎えにくる時間になるよ」
「ああ!着替えたぞ」
琥珀が自室から出てくる。
「わぁ……!!」
思わず歓声を上げていた。
新しい服を着た琥珀は、本当にモデルのようだった。
「すっごい、似合う似合う!やっぱ奮発してよかったー!」
「しかし、少し寒いな、上着にもう一枚着ようと思うんだが」
「上着って……え……あのおじいちゃんの……?」
「うむ」
「やめて、本当にやめて。切実にやめて」
「……何もそこまで否定しなくてもいいだろう……」
「せっかく格好いいのに、もったいないもん」
「……まあ、お前がそこまで言うならやめておこう。寒いのは我慢することにする」
「お洒落は我慢ってよく言うしね」
「それにしても、凪はいつもと変わらんな」
「え……いつもより気をつかったつもりなんだけど……」
「印象が変わらんのだ。やはり凪の服を買ったほうがよかったな」
「いいの。デートに行くわけでもないし。そんなお洒落しなくてもいいの」
「それを言うのなら俺だって博士のセーターで……」
「マジでやめてください」
「…………あのセーター…そんなにダサいのか……」
琥珀がぼそっと呟くと同時に、外で車の停まる音がした。
東が来たようだ。
「おぉ…すごいな、高級車か」
「毎日洗車してんのかってくらいピカピカね」
「凪、凪。これを見ろ、エンブレムにダイヤがついている」
「わっ、本物?」
「うむ、本物だな。周りも純金だからな」
「贅沢すぎ……エンブレムだけでいくらかかってるんだろう」
「む、見てみろ、こっちにもついているぞ」
「うーーわ」
「…………お前ら早く乗れよ」

