なんだろう。今、聞きずてならない単語が聞こえた気がする。

恋人?コイビト?KOIBITO?

「……ハハハ、冗談だよ。」

殴りたい、この笑顔。

というわけで、実行だ。

「ちょっ!?あ、あぶな、危ない!!」

ゴスッ、と重い音がする。ふむ、強く殴りすぎたか。「―――……うぅ、君、女の子でしょ?乱暴だよ…。」

ん?誰が女の子は乱暴しないと決めたんでしょう?
屁理屈で青年に返す。というか、さっさと名前教えろ。
「だんだんきつくなって来てる!」
そんなことはどうでもいいんだ。私が知りたいのは…。

「――レイディー。」

?レイディー?
首を傾げながら、オウム返しで呼んでみる。
「なぁに?」
ニコリ。笑みを顔に張り付けた青年――レイディーは満足そうに頷いた。

「うんうん、ありがとう。じゃあ、そろそろ本題にうつろうか。――藤咲 椿ちゃん。」



――!?いま、私の名前を。言っていないはずなのに。

「ふじさき つばき。君は忘れたかもしれないけど、オレは、覚えてるよ。」


――この時の、レイディーの笑みが。

私の心に何かを宿した。