今年は冬が長かった。

日本全体に大寒波が押し寄せ
この間やっと春らしい柔らかい陽射しを拝むことができたくらいだ。

その影響もあってか
校門をくぐってすぐ目の前に佇む桜の木はまだ蕾のままで
まるで私を歓迎していないように思えた。



県の中心部から少し離れた所に
ひっそりと設立している城之内高校。

特別頭の良い学校ではないが
かといって不良が集まる学校でもない。

良くも悪くも
"平均的な"学校である。

そんな高校の校門付近で
眉間に皺を寄せている一人の少女。

いや、少女というには
少し顔が大人びている。

長くツヤのある髪をバレッタでとめ
目は少し切れ長であるが
綺麗なくっきり二重。

しかしその瞳は熱を帯びていない。


彼女の名は「三浦 梓 (みうら あずさ) 」。

出身中学校は
県内でも名の知れた学校だ。

そんなエリート中学校から
この高校を志望する者は
おそらく彼女くらいであろう。

彼女の同級生は
皆、もっと難関な高校を志望しており
城之内高校には目もくれていなかった。

そして、身に纏っているオーラがそうさせるのか
彼女はこの高校の中で一人浮いていた。