大嫌いなアイツの彼女になりました。







「うわぁ、早く乗りたい!」


 隣でワクワクしながら前の方を見つめる望月相馬。


 早く乗りたいのは一緒なのに、ここまで違うのか。

 下を向いてドキドキしているあたしとは対照的だ。


 少しずつ前に進んでいく人の波に体を預けながら、逆走したいななんて思った。










 30分後、やっとあたし達の番がやってきた。

 従業員さんの案内で席に座る。


 でも、それは13列目。

 一番最後の列だ。



「ギリギリ乗れたなーっ」

 なんて望月相馬は楽しそうに笑うけど、あたしはとても笑える状態じゃない。



 だって、ジェットコースターで一番怖いのは最後の列だから。

 そう、昔友達に聞いた。


『浮遊感もスピードも、一番すごいのは最後の列だよ』

 今でもその言葉を覚えている。


 後ろに誰もいないのも怖い。


 なのに、そんな席に座ってしまった……。


 泣きそうになる気持ちをぐっと堪えて、従業員さんが降ろしてくれたレバーをぎゅっと握った。




「楽しみだねっ、純香ちゃん」

 あたしの気持ちを何も知らない望月相馬の満面の笑みを見ても、怒りも何も感じない。

 それくらい、怖くて怖くて仕方ないのだ。