「よっしゃーっ!歌うぞーっ」
突然、そんな陽気な声と同時に部屋のドアが開いた。
そのことに驚いて、思わずそちらの方を見た。
ドアの前には、ほとんど金髪の男の子が立っていて。
一瞬だけ、男の子と目が合う。
一瞬だけだったのは、あたしがすぐに逸らしたからだ。
だって、その人は……。
「……誰だよ、お前」
男の人が低い声でそう言った。
その声には、怒りがこもっている。
だけど彼は、そんなのに怯まない。
「あれ?104じゃなかったっけ?」
あくまで陽気に、伝票に目をやる。
彼は、きっと気づいていない。
あたし達の間に流れる、彼とは大違いの不穏な雰囲気に。
「ここは103だよ。隣だろ?」
「そっか、ごめんごめん。」
彼は後ろを向いて、誰かとそんな会話をする。
ここからじゃ彼が邪魔になって見えないけど、きっと友達かなにかだろう。
彼は再びこちらを向いて、
「すんません。間違えたみたいです」
と、笑った。
その言葉を聞いて、隣にいる男も作り笑いを見せる。
「いや、大丈夫」



