「ここってさ、店員が仕事中にカラオケしちゃ駄目なんでしょ?」


「っ!」


「いいのかなぁ、言っちゃって」



 男の人はニコッと笑いかけてくるけど、その瞳は笑っていない。


 そう、このカラオケ店では店員が仕事中に客とカラオケをしたらいけないという決まりがある。



「俺の友達が昔ここで働いててさ、教えてもらったんだけどぉ~……もしバレたらどうなるんだっけ?」

 もちろん……クビ。


 怯んだあたしを見て、チャンスとでも言うかのように男の人があたしの肩に手を回した。

「適当に用事出来たとか言って抜けてきなよ。待っててあげるからさ」


「…………。」





 ……どうしよう。


 クビになるのは、嫌。

 でも、だからと言ってホテルなんて……



 だけど、この部屋にいるのはあたしと男3人だけ。


 守ってくれる人もいない。

 逃げようと思ってもきっと、この手を振り払う力なんてない。

 もし仮に逃げられても、店長に唄ってたことを報告されクビになる。


 イコール、この状況では「はい」という言葉しか言えない。



 嫌、だ。

 いやだっ!


 ぎゅっと目を瞑った。

 ……その時、だった。